ノンアレルギー住宅
最近、家に生息するダニの害に悩む家庭が増えています。ダニは気管支喘息やアトピー性皮膚炎などの 原因となります。特に気管支喘息の50〜90%は、室内のダニが原因とされています。木のにおいには、このダニの繁殖を抑制する作用があります。ヒノキ・杉などの国産材、ベイヒ・米杉などの北米材においで、ダニの繁殖が抑えられている事が確かめられています。下 のグラフでは、屋久杉と杉などの殺ダニ作用を示しています。屋久杉の土埋木は屋久杉の6倍、杉の10〜50倍の精油を含んでいます。この精油の元では、ダ ニは3日後に90%以上が死滅しています。また、クマリンの元では一日で死滅しています。 クマリンは桜の葉から抽出される成分で、桜餅の葉から発する甘い 独特の香りが、クマリンのにおいです。 |
出典:木材学会誌 谷田貝光克ら vol.37(4) (1991)
植物の精油は昆虫の忌避剤として、古くから使用されています。杉の葉を蒸した蚊取り線香、クスノキから
えられる樟脳(防虫剤)などがその例です。また、木材を食害する代表的な害虫の一つ、シロアリの予防にも 木材のにおい成分は、大いに寄与しています。ヒノキ・コウヤマキ・サワラ・ヒバにはシロアリを殺したり、追っ払ったりする作用のある部分を含んでいます。昆虫忌避剤の研究は盛んに行われていますが 多くの精油が昆虫忌避効果があると報告されています。 |
木のにおいの成分の中には、クロカビやアオカビ類、木材腐朽菌、黄色ブドウ球状菌、大腸菌、さらに虫歯を起こす虫歯菌などの細菌に抵抗力があるものがあります。特にヒノキ、ヒバのにおいには強い抗菌性のある事が試験結果により明らかになっています。木のにおいには、抗生物質や合成薬品のように強力な抗菌作用が ありませんが、反面穏やかに作用するため、副作用が少ないという特徴があります。環境汚染、抗生物質の 耐性菌などが問題となっている現在、天然精油の作用を見直す時期にきているのではないでしょうか。 |
フィトンチッド
森の中に入ると、すがすがしいにおいに包まれます。このにおいが樹木の発散する芳香、フィトンチッド です。フィトンチッドは、植物が、たえず侵してくる微生物から、身を守るために作り上げて来たものといわれます。 森林には動物の屍骸や種々の堆積物がありますが、悪臭を感じさせないのは、フィトンチッドが抗菌性や 消臭効果を持ち、環境を浄化する能力があるためです。 桜餅や柏餅、笹団子などの葉や刺し身の具のシソの葉、鮨屋のケースに見られるスギやヒノキの葉は、 フィトンチッドの殺菌力、消臭効果を利用しているものです。また、フィトンチッドが体に良い事も科学的に明らかになっています。森の中でフィトンチッドを胸一杯吸い込み、心身を鍛えようという森林浴も盛ん です。樹木が発散するフィトンチッドの量は6〜8月にかけてが多くなりますので、この季節が森林浴には 最適なようです。 |
参照 「木がつくる住環境」 発行 (財)日本木材総合情報センター